◆21:10(発車定刻)

快速電車のドアが閉まる、が まだ乗り込もうとする者たちもいる、駅員がその者たちを車両に押し込め、やっとドアが閉まる。まだ階段を登ってくる者もいるが、さすがにもう間に合うはずもない。
快速電車は発車しようとゆっくりと動き始める。
だが…

…女性の悲鳴と共にその電車は止まった…


数人の駅員が素早く駆け寄り 私の見ていた快速電車の車両の前で立ち止まる。私の位置からは 柱に隠れて詳しい状況はわからない、見えるのはその周りに集まるヒトゴミだけである。
こちらの普通電車内の人たちもザワツキ始める。乗り急ぎ 雨のため濡れたホームに足を滑らせたのか、手に持つカサを電車に捕られたのか。そして…落ちてしまったのか、そして……どうなってしまったのか。それぞれの憶測の言葉が車内を埋め尽くす。


◆21:12
まだ ホームは喧騒を失わない。まだ 状況を告げるアナウンスはない。


→つづく/3:結末