もうかなり昔、私がまだ小学生の頃…

10月初旬、近所の公園にはキンモクセイが咲き乱れ、鮮やかな香りを放っている秋の日のことです。

その日は母親の誕生日、私は何かプレゼントをあげようと考えました。
しかし、小学生の私がプレゼントを買えるようなお金を持ってるハズもありません。
お金が掛からないものであれば、ベタに「肩たたき券」などでも良かったのでしょうが、何かつまらなく感じました。

そこで私は考えました。
「公園のキンモクセイ、あの鮮やかな香りをプレゼントすればどうだろうか?」と。

早速 私はそれを詰めるための入れ物を家中から探し出します
しばらくしてやっと「コーヒーの空きビン」を見つけました
そして それをきれいに洗い、丁寧にラベルをはがしました。

その空きビンを持って公園へと駆けていきました。
公園に近づくにるれ キンモクセイの香りがだんだんと近づいてきます。
そして、オレンジの花を落とし 辺り一面を鮮やかに染め上げ、
その花から 鮮やかな香りを放つキンモクセイの木の下に着きました。

木になっている花をビンに入れました。
地面に落ちている花は、砂をきれいに はらってからビンに入れました。
あっという間に ビンはキンモクセイの花で一杯になりました。
ビンは透明だったので、きれいなオレンジ色が見えます。

家に帰った私は、オレンジのビンを部屋のすみっこに置き
キンモクセイの香りがする部屋で、母親の帰りを待ちました。

しばらくして、母親が帰ってきました。
そして すぐにその香りに気づき、こう言いました…

「なにっ? なにこのニオイっ!? クサっ
 なんやろ? どこからや??
 あー。このビンかぁ。
 なにもうコレっ、捨ててイイ?」

私は言いたかった言葉を出せずに、ただ うなずきました。

「誕生日プレゼントやねんっ!いいニオイするやろっ!!」
この言葉は 今もまだ言えないままです。


(おわり)


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